株式会社JEXS
 ◆採用選考手法-経験ベースの面談
    Past Experience based Interviewing

採用面接の主流はいわゆる「面接」である。しかしながら、面接をどうやるかを自社なりにしっかりと型決めできている企業はほとんどない。面接は属人的であり、面接者/面接官の眼力によるところが大きいし、それは妥当なものと信じられている。

ある企業を伺った際に、人事部長から採用基準を見せられ、その基準を補完する項目があれば、教えてほしいと相談を受けたことがある。すでに10以上の項目があり、仮に30分の面接時間として、それだけの項目を5段階に的確に評定できるか、疑問に思ったが、いくつかの項目例を紹介した。そうすると、それらも織り込んでいくというお話だった。

どの企業も何らかの採用基準は持っている。しかし、その基準をどういうアプローチで評定するのかの手法は面接官任せになっていることがほとんどである。採用選考の先進国である米国ではどうだろうか。もちろん、どういう質問をするのか、それに対する答えをどう評定するのか、そういうノウハウ本もある。しかし、評定手法の基軸、骨子はしっかりと解説されているし、意識的に手法を選んで実施している。

スポーツに例えれば、選手の評価基準は明確になっていて、煩瑣なほど細目まで決められているが、選手のパフォーマンスの良しあしをつかむ目線が欠けているとでも言えばいいのだろうか。つまり、何に着目し、どう評定するのか、その思考プロセスが重視されないといけないのである。

今回、紹介する「経験ベースの面談(PEB)」は、端的にいうと、過去の職務経験に着目し、それによって、採用後の活躍を予測しようとする方法である。日本でも、過去の職務経験を経歴として聞き、それを参考にすることはある。しかし、この手法は、そうではなく、シミュレーションとして掘り下げていくところに特徴がある。

バーマン(Barman,2000)は、アパレル店のマネジャー―候補を選抜する例を紹介しているが、採用担当者は、アパレル店での職務経験を前提に、次のような設問をして、その適性や能力を図ろうとしている。

1.あなたがあるお店のマネジャーだと仮定して、その場合に取る行動を教えてください。
2.一人の顧客がお店に入ったとして、どのような行動を取るか、順追って説明してください。
3.そのような行動を取るのか、どうしてですか?(適宜)

この設問によって、被面接者の職務知識や適性、能力を知ることができる。もちろん、頭の上でのことなので、実際の身体的スキルはどこか別の観点で確認をしないといけないかもしれない。

さて、このような過去の経験を尋ねる方法はコンピテンシー面接でしばしば強調されてきた。しかし、このPEB手法は日本で限界がある。なぜかというと、日本の場合、新卒採用がほとんどであり、彼らには「厳しい職務経験(Job Challenge)」がないのが通常である。もちろん、部活やアルバイトという経験があるかもしれない。しかし、部活は組織行動かもしれないが、企業での職務行動とは次元が違うだろう。また、アルバイトは時に貴重な職務経験の基礎になるかもしれないが、アルバイトの大半は単純で定型的なものであり、企業が求める将来のマネジメント能力や企画立案能力を予測するものではない。したがって、学生時代の経験をいくら聞いても、それは職務経験を掘り下げることはできないわけで、PEB手法には限界がある。PEB手法が有効なのは中途採用の方である。

こうした認識を持ちつつも、PEB手法を適切に運用する手法を自社なりに型決めし、かつ複数の面接官にスキル共有、目線合わせを行なう必要はある。また、自社ではどのような設問をし、それに対してどのような評定をするのかを検討し、関係者をトレーニングしないといけない。

コラムでは、このほかにも様々な面接手法を紹介したい。なお、自社の採用選考プロセスを見直し、再構築し、強化する取り組みは今後、各社で熱心に取り組まれていくべきである。その場合、採用選考とアセスメントに経験豊かなコンサルタントの協力を得ることも大事なことであろう。JEXSでの指導事例では、中途採用で営業マンを採用する外資系生保での熱心なトレーニングが印象的であった。今後は、幅広く、新卒採用でも、採用選考トレーニングを実施すべきである。

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